男の一本道
今から20年ほど前と言うと、
私がシャンゼリゼ通りでムーンウォークを思いついた頃だろう。
当時から日本人だった私は、
街行くパリメンたちからよく声をかけられたものだ。
仏男:「ジャポンでは”漢”と書いて、”おとこ”と読むと聞いたぜ、シルブプレ。
本当かいムッシュー?
…ところで、何でおまえは後ろ向きでウォークできんの?」
サムライ度数での勝負なら
あのアグネスですら“時間切れ引分け”に持ち込める私にとって、
”漢=おとこ”なぞ、社交界の常識。
(あっ、アグネスって言っても”ラム”の方ね。”チャン”は怖いから無理。)
いや、むしろ”漢”と名のつくモノなら
片っ端から我が身を投じ、
まさに”漢”を極めた“漢”と言っても過言ではない。
そこで今回は、
久しぶりの日記でもあることだし、
“漢の達人”と言われる私が"痴漢"について少し語ろう。
貴殿が朝の通勤ラッシュを快適に過ごそうと、
“どの令嬢にタッチいたそうか”決めかねているとき、
「イヤァァ、この人、痴漢ですっ!!」
と、突然、眼前のオバサマに叫ばれることもよくあるだろう。
次の駅では駅員も血相変えて駆けつけてくるが、
貴殿はこの段階ではまだ品定めをしていたに過ぎない。
もちろん、悲鳴を上げた年配のクリーチャーは標的ですらない。
さわやかな朝の、人と人の手との触れ合いはお預けを喰らったままだ。
駅員は言う、
「ちょっと、駅事務所まで一緒に来てもらえますか?」
ここで注意して欲しい。
駅員は何も貴君に好意を寄せて誘っているわけではない。
極論だが「駅員は痴漢であれば誰でもいい」とさえ思って頂いてもかまなわい。
恋のトキメキ勘違いは虎舞竜のもと。
ここで尻軽漢たちがホイホイとイケ駅員ついて行ってしまうから、
あとで泣き寝入りをせざるを得なくなってしまうのだ。
駅員には身分証を提示し、
毅然とこう言ってやればよろしい。
貴殿:「私はまだ痴漢ではない!
私のことはオヌシも知ったであろう。その手を離し給え!!」
これで一件落着。
駅員がどんなにイケメン揃いだろうと、彼らに拘束権は無いのである。
堂々と電車に戻り、また、朝のタッチ&トライの研鑽にいそしめば良い。
私ならば駅員の労をねぎらってチップを渡すことも忘れない。
ただ、もうひとつ注意をしておこう。
駅員だと思って強い態度に出ていたら、
尋問者は潜伏捜査中の警察官であり、
かなり前から目を付けられていたというレアケースもある。
それは、貴兄に”現行犯逮捕”という
新たなステージに進むべき刻が来たサインなのだ。
まだ名残惜しさもあろうが、
「赤城の山も今宵限りかぁぁぁ!!」
と、駅ホームで周囲の人だかりに向かって叫び、
漢(おとこ)らしく兜を脱ごう。
もし、それができぬなら
最初から痴”漢”道には足を踏み入れぬことだ。
痴漢道は、
「キャア、痴漢」「キャア、痴漢」とおなご衆の黄色い声援でモテ囃されるからと言って、
決して平坦な道ではない。
それが“漢”。
唯一にして絶対の一本道。
その道に近道などないのだから。
・・・あっ、そう言えば、『男闘呼』と書く人たちもいるよ。
-了-
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